財源問題にかんするごく簡単なリマーク

いわゆる「真水」に該当する金額の小ささや,必要な人に必要なタイミングで届かない可能性が極めて高いことなど,日本政府の経済対策の問題は,かなり取り上げられていると思う.この時期にこうした記事を発表する意図が何なのかに関係なく,この記事は,今回の政府の意思決定には,財政を悪化させることに対する懸念が大きくかかわっていることを示している.いわく,大きな金額の財政支出は財政を悪化させるから不可能という判断である.

 

財源問題については様々なスタンスがあることは周知の通りである.しかしたとえどういうスタンスをとるにせよ,次の可能性はすべての人が考慮すべきだと考える.すなわち,少額の財政支出で済まそうとしたせいで,感染症が一向に収まらず,より多くの倒産,失業などの経済悪化をかえってもたらし,さらなる財政支出が必要になるという可能性である(経済学で言うと,一種の機会費用が発生するということ).私が調べた限りでは,デンマークの政策当局者はこの考慮を行っていることを明言しているし,大規模な経済対策を行っている欧州諸国も似たようなものだろう.日本とは規模が異なるものの財政赤字を抱えるフィンランドの政策当局者は,財政赤字の解消は二の次であるということ,また,大規模な財政支出を行った他の先進諸国も財政赤字に見舞われることは間違いないので,いま財政赤字を拡大させてもフィンランド国債の格付けが他国よりも格下げされることはないとの認識である.

 

私は,長期的には税収を確保し,財政再建を行うべきとの立場である.それは多分に,現在は国際的に見ても低い,政府に対する人々の信頼を高めたり,教育や保健を含む,広義の公的な生活保障を充実させることなども必要になり,極めて困難な課題だとも考えている.しかし現在は,社会・経済を破壊しかねない危機なのである.上で述べたことから考えて,現在の状況で財源問題にこだわって財政支出を渋るのは,極めて近視眼的な対応だろう.