複雑適応系としての組織:Tim Harford "Adapt"

現在,IT中小企業への聞き取り調査のためインドに来ている.インドについても書きたいことがあるのだが,それは後回しにしたいと思う.

 

いつも空港で本屋に寄って,機内で読むかなと思って本を買ってしまう.得てして機内では寝てしまうからほとんど読まずじまいなのだが,懲りない性格だからまた今回も何冊か買ってしまった.デリーへの移動途中にバンガロール空港で買ったのが上の本.日本語訳も出ているようだ.

 

社会や組織の構成員が直面する環境は複雑だということを踏まえる限り,社会や組織が新しいことに取り組もうとするプロセスは「試行錯誤」であらざるを得ない.だから「変異+淘汰」で進化を説明するダーウィン的な考え方が非常に有用なのだ.つまり,(社会にとっての)政治とか,(組織にとっての)マネジメントとかというのは,進化プロセスをうまく「手なずける」ことに他ならないというのが,著者の認識だ.

 

しかし,言うは易し,行うは難し.どこにその障壁があるのかを,これでもか,これでもかというくらい執拗に事例を挙げて論じている.ここに本書の特徴がある.

 

個人的には進化論の考え方はなじみ深いし,組織現象を複雑適応系として見なくてはならないというのは,結構古くて根深いテーマだ.しかし,これほど生き生きと事例を見せてくれる本はなかったと思う.「読ませる本」だ.