2018年度担当講義


学部

経済学(全学・人間社会),経営環境(専門),経営分析(専門),経営戦略(全学・ものづくり経営基礎),食糧工学,経営システムセミナー,社会工学基礎,経営システム工学演習,経営管理工学(第2部),創造方法論

 

大学院

経営管理特論,産業戦略事例研究,コロキウムI,コロキウムII

 


2015年度後期 (水曜18:00-)大学院「経営管理特論」について

例年は技術・製品開発の人材・組織に関わるミクロ的な分析・考察を行ってきました.しかし今年度は,「イノベーションの経済学」の一大研究課題である,社会経済と技術の連関をマクロ的・長期的視点から俯瞰して分析・考察することを課題にしたいと思います.具体的には,「技術・社会・経済の絡み合いから見て現代はどういう時代か」「今後,技術・社会・経済はどのように展開するというシナリオが描けるかという2つの枢要な問いを考えてみたいです.

こうした技術革新研究に携わる経済学者たちは,技術革新と経済の関連性を歴史的・理論的に考察した大著を残した大経済学者シュンペーター(Shumpeter, J.A.)の名前を取って「ネオ・シュンペーテリアン」と呼ばれます.

一面では,新技術は社会・経済発展をもたらす可能性があります.しかし他方では,社会・経済体制の刷新がはかられないために,新技術の潜在力が発揮されない可能性もあります.例えば,20世紀初頭に現れた大量生産技術がその潜在力を爆発的に発揮したのは,1950年代以降でした.それは,大量消費を可能にする経済体制がこの時期までにようやく確立されたためです.代表国である米国について具体的に言うと,労働組合の合法化や社会福祉の確立などです.

このように,技術発展と社会・経済発展は車の両輪ですが,両輪がバランス良く進むことは例外的なのが実態です.それでは,現在私たちが生きている21世紀初頭はどういう時期なのでしょうか?また,この先例えば2050年はどのように展望できるでしょうか?今年の経営管理特論は,これらの重要問題について分析・考察をする場にしたいと考えています.

講義形式ではなく,演習(ゼミ)形式で進めたいと考えています.具体的には,次の文献を中心に熟読し討論することを考えています.英語文献には概説を入れますので心配無用です.

[2] ブライアン・アーサー, 2011『テクノロジーとイノベーション:進化と生成の理論』みすず書房.

代表的なネオ・シュンペーテリアンの経済学者であるカルロタ・ペレスによる前者は,社会経済,特に金融の動態と技術発展の関係について,50年周期の長期波動という観点から画期的な解明をした本です.後者は,技術発展の一般法則を追求しようとした野心的な経済学者の本です.

両者とも学術的に定評がある文献ですが,前者については,実務家(テクノロジー企業への投資家)からのこのような評価の方が,実務家にとってさえ本書の価値があることを分かりやすく伝えているかもしれません.また,後者の本も,日本語版の帯によれば,Java開発の意思決定の際に参考にされたそうです.

Perezによる,金融危機後の近年の技術・経済を展望した直近の下記論文も,余裕があれば扱いたいと思います.

[3]Perez, 2009, The double bubble at the turn of the century: technological roots and structural implications, Cambridge Journal of Economics 33 (4): 779-805.

[4]Perez, 2010, Technological revolutions and techno-economic paradigmsCambridge Journal of Economics 34 (1): 185-202.

[5]Perez, 2010, The financial crisis and the future of innovation: A view of technical change with the aid of history. Tallinn University of Technology.

[6]Perez, 2012, Financial bubbles, crises and the role of government in unleashing golden ages. FINNOV Discussion Paper.


日本人の手による次の書籍は,[1][2]を理解するための助けとなるでしょう.
[7] 弘岡正明, 2003, 『技術革新と経済発展:非線形ダイナミズムの解明』(日本経済新聞社)

近年たいへん話題になった以下の政治経済学的分析も,イノベーションに対する国家・政府の役割を巨視的・長期的に捉えたものとして参考になります.邦語訳も出版されるようです.

シュムペーターによるこの分野の古典は,この本ですが,日本語要約版であるこの本がアクセスしやすいでしょう(いずれも名工大図書館に所蔵あり).